「泉」

その紳士の名前はマルセル・デュシャン
ある日、その紳士は、ふと、思いついて便器にサインして
「泉」と題名を付けてみた。

これを私の作品としよう・・・
紳士の思いつきは世間に激しい議論をもたらした

サインをしただけで芸術作品とする事に
評価は真っ二つに割れた
これは芸術概念の革命か、
それとも
たんなるジョークか、
また、その両方か?
 
しかしどちらかに結論がでる前に
この便器は現代芸術を変えてしまった。
 

 
「L.H.O.O.Q」
 
紳士はまた、ダビンチの名画、「モナリザ」にも
ちょっとした悪戯書きをしてみた。
L.H.O.O.Qとは、直訳すると放送禁止用語ならぬ
ブログ禁止用語に該当するような不遜な意味がある。
ダビンチと言う権威に対するアンチテーゼ?
はたまた、ちょとした悪戯心?
 
紳士の思いつきは何時も世間を騒がせる。
 
そのせいなのか?
その後紳士は作品の発表をやめてしまう。
そして、ひたすら、チェスに興じる。
 
時は流れ、紳士も歳をとった、
もう自分は長くない、そう悟った時
紳士の悪戯心は又、ある企てを思いついた。
自分亡き後、秘密のメッセージをある箱の中に残しておくのだ。
しかも、自分の死後10数年はこの箱の中身を公開してはならぬと強く厳命して・・・
そして、紳士はこの世を去った。

 
10数年後・・・箱の中身は公開された。
その中に残されたメッセージを世間は固唾を呑んで待ち望んだ。
 
 
私はこの中にあったメッセージを直接見た事があるので知っているのだが・・・。
紳士一流のアイロニーなのか?
それとも単なる、・・・・・か?
 
知らぬが仏と言う事もあるので、ここでは言わぬ事としよう。
 
私が想像するに紳士はきっと今でも天国でチェスに興じているだろう。
そして、静かに微笑みながら自らの作品の完成を実感している事だろう。
 
 
デュシャン (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシック・アート・シリーズ)
ポスター マルセル デュシャン L.H.O.O.Q 1919年