長谷川潔作品集表紙
マニエール・ノワールの巨匠「長谷川潔」の作品集を購入しました。
 
実際に手にとって作品集を眺めてみると、
しっとりと落ち着いた画集で長谷川潔の作品集にふさわしい装丁です。
勿論、作品を見る事が中心の作品集ですからこのシンプルなデザインが心地良く感じられます。
 
この作品集に収められている作品は京都国立近代美術館の所蔵品です。
しかし、作品集の序文によりますとその選定は長谷川潔本人によるものだそうです。
 
1973年当時の京都国立近代美術館の館長である河北倫明氏の提案で長谷川潔回顧展を開催するにあたり、版画家自身の選定による近代美術館のコレクションを作成しようと言う事になったのが元々の始まりだそうです。
 
従って、この作品集に収められいる作品は長谷川自身が自らの代表作と考える作品が主になります。
しかも、その殆どは自らが大切に保管していた摺りの良い状態の作品だそうです。
 


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実際に画集を見てみると、初期の板目木版の時代から小口木版、そしてフランスでは既に廃れてしまったマニエール・ノワール(メゾチント)を苦労の末、復活させた頃の初期の作品、また、その後の熟練の域に達して「ビロードのような深い黒」と言われた完成期の作品までと、長谷川芸術を一望出来る構成になっています。
 
長谷川潔作品集図版
 
「墨に五彩あり」とは水墨画の豊かな黒の表現の事を言いますが、
改めて、東洋人である長谷川の感性と西洋版画のメゾチント技法が見事に溶け合い、
神秘的な美しさを湛えた作品群には「黒の宝石」と呼ぶにふさわしい美しさを感じました。
 
さらに、管理人が個人的に注目したのは初期の板目木版画時代の作品の中で「特殊ボカシ試刷」と表記された「海岸の家の群」と「海岸の木挽小屋」と言う作品です。
(上の画像の上段左が「海岸の家の群」です。)
 
これは素人考えですが、この作品は「刷毛によるぼかし」と布等による「拭きぼかし」を併用して、さらに独自の「摺りぼかし」を工夫をして摺った作品だと思われます。しかし最も注目するのは、後々の「マニエール・ノワールに繋がる深みのある明暗の諧調を表現しようと、この頃から調子の滑らかな変化を表現する試みを始めていた」と言う点です。
 
そして、この作品の制作年を見ると1917年(大正6年)とあり、渡仏する前年に制作されています。そう考えるとまったく的外れな考えでは無いと言えるのではないでしょうか?
もし、そうだとするならマニエール・ノワールの深みのある諧調は木版画時代からの試行錯誤の結実だった言えます。また長谷川潔がいかに自らのイメージの顕現に執念を持っていたかが感じられ感動しました。
 
作品数も多くじっくり見ればまだまだ発見のある深みのある作品集だと思います。そう言った意味では長谷川潔ファンにとって垂涎の一冊だと思います。
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