どこからか遠く・・・
かすかに聞こえる風の音
玄関の戸が

ギッ・・・
ギッ・・・

僅かに揺れて軋む音
沈黙の中、初老の画家が神経質に絵筆をカンバスに擦りつける。
丁寧に丁寧に、殆ど湿り気のない筆先を・・・

 


 
「クリスティーナの世界」
 
クリスティーナはゆっくりと進む
大地に手を這わせ、兎に角くゆっくりと
 
彼女にとっては日常の行為・・・
あたりまえの風景。
 
しかし、他人はその懸命さに心動かされと言う・・・
 
彼女は言う
 
私の生活はここにある
私の世界もここにある
喜びも、苦しみも、悲しみも、
全てはここにある。
不自由な事など何もない。
 
ふっと見ると
老画家の筆先は中空で止まったまま時間だけが過ぎていく
さらさらと落ちる砂時計の僅かな音さえ辺りに響く
老画家は何を思うのだろう?
 
ただ生きる事
だだ描く事
だだ見つめる事
 
画家の黙想は永遠に続く
 
クリスティーナがいる限り

 
「クリスティーナの世界」
アンドリュー・ワイエス【Andrew Wyeth】額装ポスター Christina’s World